桃伝説 第1章
1章「来襲せし者達」
①
「桃から産まれたから桃男にしようかと思ったけど、それじゃあんまりだから、
桃の種男。いや、なんか種馬みたいで格好悪いから没。じゃあ、桃の助。
・・・なんかピンとこないねぇ・・・。あ~・・・なんか面倒になってきた。
もう良いわっ!なんだかんだ考えるの辞めた!こいつの名前は普通に太郎!」
略して桃太郎は、お婆さんとお爺さんの元ですくすくと育ちました。
戦闘の達人であるお婆さんからは、戦いの基本から応用までを、
マゾの神であるお爺さんからは、防御の基本から応用までを
(あえて攻撃を受けて快感に浸る方法はお婆さんの強い反対にあい、
教えることが出来ませんでした。)、
それぞれに教えてもらいながら、桃太郎は実に「強く」「逞しく」
そして「野心家」に育ちました。
産まれ出でて8年を数えた時から、桃太郎は心に一つの想いを抱くようになっていました。
「天下統一」
なんと、10歳にも満たない、この子供の目には、
既に歴代の諸大名となんら変わりのない、野望の火が灯っていたのです。
(だが、まだ早い。今は心身ともに未熟。あと5年・・・。あと5年のうちに、
あらゆる困難に対抗しうるだけの、強い身体と心を養わなければ・・・。)
桃太郎、生後8年と4ヶ月。今日も彼は明るい未来に向けて、
己を磨き続けているのでした。
②
その頃、桃太郎の住む、この大地に、二つの異変が起こっていました。
まず一つは、今まで名も無かった小さな集落が、名前を持ち始めたことです。
近隣の集落の長が集まって寄り合いを開いたところ、
①集落に名前が無いのは不便だ。
②これからはそれぞれの集落も個性を持つべきだ。
③集落対抗運動会がやりたい。
④お婆さんに斬られた吾兵は何処の集落のものだ?
⑤筆者が、集落に名前がないと書きづらい。
⑥集落に名前が無くても、読者に分かりやすく書けるほど、筆者には文章力が無い。
など、様々な意見が飛び出し、それぞれに名前を持つことが
決められました。
桃太郎の住む集落は、雄大なる馬追丘陵(この物語の中の丘陵。
ちなみに「うまおい」と読みます。)の麓、
ゆったりと縦に伸びたその姿から「長村」と名付けられました。
長村から北へ徒歩で1日の距離にある、吾兵の住んでいた集落は、
秋に立派な栗の木が、多数実を結ぶため「栗村」と名付けられました。
その他にも、幾多の集落が、それぞれの特徴を込めた名前を、
自らの住む集落にあてがうようになりました。
こうして、多くの集落が集まり、「蝦夷国(えぞぐに)」が形成されたのです。
③
二つ目の異変。
蝦夷国が形成されてから、2ヶ月も経たないうちに、
国の至る所に「鬼」が目撃されるようになったのです。
鬼は田畑を荒らしたり、家畜を襲ったり、徒党を組んで村を襲撃したりと、
悪行の限りを尽くしていました。
それぞれの村の村長は、再び寄り合いを開き、
鬼に対抗するべく、討伐隊を結成して鬼退治に向かいました。
しかし、鬼達は、この世のものとは思えない強さで(そりゃあ、鬼だからね・・・)、
幾度となく派遣された討伐隊は皆、ことごとく全滅させられてしまいました。
そして、その後鬼達は、蝦夷国最大の集落である「札村」を陥落。根城を構えると、
近隣の村に対して侵略を始めたのです。
鬼達の中には、特に凶暴な三匹の鬼が居ました。
ここはキャッチフレーズ付きでご紹介いたします。
一匹目は、「あんたが大将、俺ら(鬼ら)の大将、
その一撃は空気を引き裂く。天下無双のろっ鬼ーです。」
その通り鬼達を束ねる総大将です。
語尾に必ず「~ワン♪」を付けて喋るという可愛らしい一面を持ちつつも、
戦闘能力は群を抜いており、百人の討伐隊をたったの10分で
倒してしまったという話です。ぱっと見「ただの犬」にしか見えないらしいのですが、
頭には立派な二本の角があり、何か気の様な物をまとっていると
言うことでした。(証言者:札村の生き残り「作衛門」)
二匹目は、「猪突猛進。ちょっと頭は弱いけど誰にもオイラは止められねぇ。
足跡いつでも一直線。特攻隊長正拳突鬼です。」
常に先陣を切って敵に突っ込む、かなり血の気の多い鬼です。
その突進力は半端ではなく、丸太で作った柵を軽々と破壊し、
待ち構えた討伐隊も、誰一人彼を止める事が出来ませんでした。
ただ、その後勢い余って岩山に衝突して、気を失ったというアホな一面もあり、
なかなかどうして憎めません。(証言者:討伐隊「熊次」)
三匹目は、「冷静沈着。それが私のモットーだ。如何なる時でも慌てるな。
お前の横には誰が居る?生ける戦術指南書計算鬼です。」
鬼達の軍師を勤める、頭脳明晰な鬼です。
バラバラな鬼達をまとめ上げ、軍隊として完成させたのが彼です。
ただ、残念ながらキャラ的には大して面白みも無く、冗談も通じないので、
鬼達の中ではどこか浮いている感バリバリです。(証言者:正拳突鬼)
このように、強力な鬼達は、今日も元気に明るく悪行に励んでいます。
果たして、人間達の運命は如何に?
こうした二つの異変が起こりつつも、桃太郎の住む長村は田舎なので、
時勢に流されず、ほのぼのと毎日を送っていました。
そして、月日は流れ、桃太郎が13歳の誕生日を迎えた朝。
いよいよ、物語は動き始めるのでした。
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