桃伝説

パロディ昔話。

桃伝説 第9章

九章「三人の頭目」

 茶屋の一軒から数時間たった頃、桃太郎とウオノメは幌村に辿り着きました。

時刻は夕方。日がもうすぐ沈もうかと言うときです。

幌村は見事な樹木が多くそびえ立つ風光明媚な村で、

樹木の枝が村をすっぽりと覆いつくしている所が幌のように見えるため、

その名前が付けられました。鬼が出現するまでは観光地として栄えていましたが、

今では観光客の姿などあるはずも無く、すっかり寂れた村になってしまいました。

それでも、立派な木々の姿は見る人を圧倒します。

「これは、凄い。」

 流石の桃太郎も、大自然の生んだ奇跡的な風景に心を動かされています。

「この村のどこかに討伐隊の生き残りがいる。まずはそいつらを探すぞ。」

 ウオノメを率いて、桃太郎は幌村の中へと入っていきました。

外はまだ明るいのですが、村の中は枝に光が遮られている為、

常に松明が灯されているようです。

しかし、薄暗い印象は無く、幻想的な雰囲気が村を包んでいました。

市場では威勢の良い声が響いており、忙しそうに駆け回る商人が

村全体に活気をもたらしています。

「思ったより活気があるな。」

 桃太郎は何処と無く気分が高揚し、ウオノメと共に村の中を歩き回ってました。

どの家からも夕食の用意を告げる煙が立ち上り、お腹の空く匂いが立ち込めています。

とても討伐隊の前線基地とは思えません。

しかし、注意深く眼を凝らすと所々に、鎧を身に着けた兵士らしき人間が

村の様子に眼を光らせているのが見て取れます。

桃太郎は兵士の一人に近づくと、真正面から言い放ちました。

「おい、討伐隊の頭目に会わせて貰おう。」

 兵士は、突然子供からこのような事を言われ、

一瞬戸惑った様子を見せましたが、すぐに平静を取り戻すと、

小声で”付いて来い”と呟き、桃太郎を村の奥の屋敷へと案内しました。

 屋敷は他の家よりも多少大きいぐらいで、それほど警備の兵士も多くありませんでした。

「客人をお連れしました。」

 先ほどの兵士は戸の前でそう言うと、桃太郎を連れて屋敷の中へと入っていきました。

屋敷の中には明らかに頭目と思われる人物が二人座っていました。

 一人は鬼にもひけを取らない巨躯の持ち主で、

傍らには巨大な十字槍を無造作に置いてあります。

歳は30半ばと言ったところでしょうか。

顔中に立派な髭を生やし、身体のいたるところに傷跡がありました。

歴戦の戦士であることは疑う余地もありません。

 その横、左手には女性の戦士が控えています。

しなやかに伸びた四肢はほど良く引き締まっており、

長く伸ばした黒髪を後ろで一本に束ねています。

何よりも印象的なのは、まだ幼さの残る顔に似合わない

鷹のように鋭く光る双眼です。

 二人の頭目は兵士に連れられてきた桃太郎を興味深く観察しました。

「小僧、俺達に何の用だ?」

 男の頭目が重低音の良い声で桃太郎に問います。

「お前が討伐隊の頭目か?」

「そうだ。」

 桃太郎に問いかけた男は熊次と名乗りました。

隣の女性は狭霧(さぎり)と名乗りました。

「お前達に提案がある。」

 桃太郎は臆する事無く堂々と言いました。

「お前達を、この俺様の支配下に置く。」

 刹那、部屋の空気が張り詰めました。

狭霧は思わず腰の刀に手をかけましたが、

熊次はそれを咎めると、鋭い眼光を桃太郎に向けました。

「小僧、まずは名を名乗れ。」

「おっと、こいつは失礼したな。俺様は桃太郎。

鬼討伐の旅をしている。」

 桃太郎はウオノメをチラリと見ました。

「こいつはウオノメ。俺の家来第一号だ。」

「グルル!!」

 ウオノメは家来という言葉に反発しています。

「・・・。」

 熊次は下を向いてなにやら震えている様子でした。

「おい?」

 桃太郎が不審に思って声をかけると、

その瞬間に、大声を出して笑い始めました。

無理もありません。桃太郎のことを知らない熊次にとっては、

犬を連れた子供が、自分の討伐対を支配すると息巻いている様にしか見えない

のですから。

「小僧!戦争ごっこは、その家来とやらと一緒にするに留めておけ!」

 熊次は苦しそうに腹を抱えながら、大声でそう言いました。

見ると、隣の狭霧も口に手を当ててクスリと笑っています。

「馬鹿にするのは、俺様の力を試してからにしたらどうだ?」

 桃太郎は、相手の反応は予想していたので大して怒りも覚えず、

冷静に言い返しました。

「少なくとも、俺様は今まで20匹近くの鬼を退治してきたのだがな。」

 桃太郎の言葉に、熊次の笑いがピタリと止まりました。

「何だと?」

「貴様が今馬鹿にしている、目の前の小僧は

既に鬼を倒してきていると言っておるのだ。」

 桃太郎は、ふんっと鼻を鳴らすと、腰の刀を抜き放ちました。

「嘘だと思うのなら、貴様自信で俺様の力を試すが良い。」

 部屋の空気が再び張り詰めました。

そんな中、一人の男が屋敷の中に入ってきました。

「今、戻った」

 男はそういうと、桃太郎の横を通り抜け、

熊次の横にドカリと座り込みました。

「早かったな。雉那」

 熊次が男に向かってそう言いました。

「あの程度の手勢など問題ではない。」

 雉那(きじな)と呼ばれた男は腰に縛り付けた酒瓶をはずすと、

クイッと酒を胃に流し込みました。

三人の頭目の最後の一人のようです。

どうやら、鬼退治から帰ってきたところのようです。

桃太郎は刀を鞘に戻すと、じっと雉那を観察しました。

比較的軽めの鎧を身に付け、熊次の鋼の身体とは性質の違う

バネのありそうな肉体をしています。

歳は20台後半と言ったところでしょうか、

無精髭を生やし、髪を短く刈った頭に鉢金を巻いています。

「何だ、この小僧は?」

 雉那は桃太郎を一瞥すると、興味の無さそうな声で問いました。

「ああ、こいつ俺達を自分の支配下に置きたいんだとよ。笑っちまうぜ。」

 熊次は忌々しそうに桃太郎を睨み付けました。

「笑う前に試せと言っている。」

 桃太郎は熊次に負けずに睨み返します。

その桃太郎の氷の視線に、雉那は桃太郎がただの子供ではない事を

感じたのか、熊次のように笑い飛ばす事はしませんでした。

「熊次。」

「何だ?」

 雉那は熊次を横目で見やると、言いました。

「お前も錆びたな。この小僧の実力が読み取れないのか?」

 雉那の言葉に熊次は心外な面持ちをしています。

「おいおい。何を言っている?お前はこの小僧に、本当に

俺達を飲み込むほどの力があると思っているのか?」

「そこまでは分からん。だが、こいつの発している気は

歴戦の兵士のまとう気となんら変わりが無い。」

「笑わせるな。こんな小僧に何が出来るというのだ。」

「だから、錆びたといっているのだ。」

 熊次と雉那との間に険悪な雰囲気が漂い始めました。

すると、ずっと沈黙を守っていた狭霧が口を開きました。

「いい加減にしないか二人とも。何も見ないで口論していても仕方が無い。

ここは、この小僧の言うとおり、実際に実力を見せてもらうしかあるまい。」

 狭霧の言葉に熊次は不満を残しつつも、雉那と

一応和解し、桃太郎に向かってこう言いました。

「良かろう。ならばこうしよう。」

 熊次は立ち上がり、幌村の周辺が描かれた地図を広げました。

「この幌村の南に鬼共の巣くっている岩屋がある。

そこの大将である”鬼蜘蛛”を見事討ち取って来い。」

 熊次は桃太郎に向かって丸めた地図を投げつけました。

「分かりやすくて良い。」

 桃太郎は難なく地図を掴むと、すぐに屋敷を出て行きました。

「本気か熊次?鬼蜘蛛は現在の俺達の標的の一つだぞ。

あんな子供に・・・。死にに行かせたような物だぞ。」

 狭霧は熊次に向かって、非難するかのように言いました。

「ふんっ。」

 熊次は聞く耳持ちません。

「俺が行く。」

 雉那は立ち上がると、桃太郎の後を追いました。

「あいつが行くのなら問題あるまい。」

 熊次は呟きます。

「最初から、雉那が一緒に行くと思ってたのか?」

 狭霧は意外な顔つきで熊次を見ました。

そんな策略を巡らすような事は熊次には出来ないと思っていたようです。

「あいつは自分が見込んだ奴の事は徹底的に世話をする。

時には裏切られる事もあるがな・・・。」

 熊次はそういうと屋敷の奥に消えていきました。

「・・・。」

 狭霧は複雑な表情をしながら、桃太郎と雉那の背中を見つめていました。

 

 桃太郎は無事に岩屋から帰ってくる事が出来るのでしょうか?

ー続く。

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桃伝説 第八章

八章「男」

 桃太郎とウオノメが栗村を出発してから、2日が発ちました。

幌村までは、あと1日も歩けば到着します。

途中、雑兵の鬼に幾度と無く遭遇したのですが、桃太郎の敵ではなく、

全て一刀の元に切り伏せてしまっていました。

ウオノメも犬の姿になってからと言うもの、持ち味であった速さに

益々磨きがかかり、もはや桃太郎を遥かに凌駕する程でした。

口に鎌を咥え、尻尾に鎖を結びつけ、両方を起用に操って

鬼達を撃退していきました。むしろ犬の姿のほうが強いぐらいです。

 

 太陽が昇りきった頃に、桃太郎は一軒の茶屋に辿り着きました。

丁度お昼の時間だったので、桃太郎はここで昼食を取ることに決めました。

お金は、鬼ノコを倒した際に、栗村から恩賞金として巻き上げていたので、

当分困る事はありません。こういう所はしっかりしている桃太郎です。

 見ると、茶屋の軒先の椅子に、一人の男が腰掛けていました。

腰に刀を差し、鋭い視線を周囲に投げかけています。

その視線が桃太郎に留まると、男はフラリと立ち上がり、

桃太郎に近づいてきました。

「おい、小僧。」

 男は偉そうに話しかけてきました。

「おばちゃん。団子二つにお茶くれっ。」

 桃太郎は面倒だったので、男を無視し、

軒先の椅子に腰掛けました。ウオノメも桃太郎の足元に座り込みます。

「おい。小僧、無視するなっ!」

 男は気分を害したように苛立って話しかけてきます。

「なんだよ。うるさいな。」

 桃太郎はいかにも面倒そうです。

大体、見かけはまだ子供の桃太郎に絡んでくるあたり、

この男もろくな者じゃありません。

「お前、ガキのくせに随分ご大層な刀を持っているじゃないか。」

 男は桃太郎の愛刀に興味があるようです。

もともと、桃太郎の刀は、お婆さんが使っていた品物で、

その名も「ノサダ」という大業物です。

普通の侍風情には、到底手の及ばない刀でした。

「お前には関係ないだろう。」

 桃太郎はガキと呼ばれたことに関して、若干怒りを覚えましたが、

なにしろ「面倒くさい」ので、これ以上係わり合いになりたくありませんでした。

「お前みたいなガキには勿体無い。どうだ、俺に譲らんか?」

 この男、どうやら恐喝しているようです。

「あちっ!おばちゃんっ!お茶熱すぎるよっ!」

 桃太郎は、男の言葉よりもお茶の温度に吃驚しています。

男、石と化しています。ストーン男です。

「おいっ!!」

 男は2度までも無視されて、非常に怒っています。

ようやく桃太郎は男に向き合い、子供とは思えない目つきで睨み返しました。

「さっきから一人でうるさい奴だな・・・。この刀が俺様に似合ってなかったとしたら

どうだと言うんだ?」 

 桃太郎は口に団子を咥えながら言います。

男は桃太郎の氷の視線に一瞬怯んだような様子を見せましたが、

すぐに落ち着きを取り戻すと、口元にいやらしい笑みを浮かべながら言います。

「だから、この俺様に譲らんかともうしておr・・・。」

「嫌だ。」

 男の話を最後まで聞かずに桃太郎はそっぽを向いてお茶を飲み始めました。

最初っからこの男は子供相手に恐喝をしようとしているのです。

まったくもって呆れた野郎です。

桃太郎もこんな小物にかまう時間が惜しいので、徹底的に無視する事に決めました。

「・・・。」

 男は完璧にコケにされて、頭に血が上り始めました。

無言で腰のものを抜くと、桃太郎に刀を差し向けました。

「小僧・・・。俺を舐めると痛い目に合うぞ・・・。」

 桃太郎はちらりと横目で男を見ましたが、構えから何から全てが

「私は雑魚です。」

 と言ってるようにしか見えないほど、格が低かったので、

思わず笑ってしまいました。

「お前、何処の誰だか知らないし、興味も無いけど、

慣れない恐喝はやめておけ。」

 桃太郎はあくまでも親切で男に言いました。

が、男は馬鹿にされたと思い込み、益々怒りをあらわにしました。

「貴様~~!!」

 男は桃太郎の首筋を狙って、 

怒りに任せて刀を横薙ぎに振るってきました。

「おっと。」

 その時、桃太郎は団子を落としそうになり、前屈みになって

なんとか団子をキャッチしました。その桃太郎の頭上を男の刀が

通り過ぎていきます。体制を崩した男はそのまま小石に躓いて転倒し、

椅子に思い切り鼻をぶつけてしまいました。

「あ?どうしたの?」

 鼻を押さえてもがく男を見て、桃太郎は口元にいやらしい笑みを浮かべながら、

ワザとらしく聞きます。

「だから、慣れない事するなって言ってるのに・・・。」

 鼻で笑います。

「・・・おのれ~~~!!!」

 男は両方の鼻から鼻血を出しながら桃太郎を睨み付けます。

全て逆恨みなのですが、男は自分で気が付いていません。

どうやら、チンピラなだけでなく、頭も弱いようです。

「貴様っ!名を名乗れっ!!」

 男は突然怒鳴ります。

「何でお前なんかに名前を名乗らなきゃいかんのだ。」

 桃太郎歯牙にもかけません。

「おっと、こいつは失礼した。まずワシから名乗ろうか。」

 男は無駄に格好つけている感がバリバリです。

なにしろ、両方の鼻の穴から鼻血がとめどなく流れているのです。

どうしようも無く無様です。

「いや、いい。」

 桃太郎は冷たくあしらいます。

「お前の名前にも興味ないし、これから会う事も無い顔だから、別にいい。」

 もはや、人としても扱って貰っていません。

男は思わず泣きそうになりましたが、気持ちを奮い起こして

勝手に続けます。

「ワシはこの近辺では、泣く子も黙ると言われた天下の侍。」

 男は自分に酔っています。

「その一撃は鬼を泣かせる無双剣。その名も・・・。」

 

ガサガサ!!

 

 と、その時、茂みから一匹の鬼が現れました。

「きゃああああ!!!」

 と、それまで一言も言葉を発していなかった茶屋のおばちゃんは、

年齢に似合わない黄色い悲鳴を上げると、茶屋の奥に逃げ込んでしまいました。

桃太郎はチラリと鬼の姿を確認しましたが、

今までの雑魚と変わりない鬼だったので、

大して焦ることも無く、余裕でお茶を啜っています。

「おい、お前。あの鬼を倒すことが出来たら、ちゃんと名前を聞いてやるぞ。」

 桃太郎は、刀を持ったまま固まっていた男に言いました。

「え?本当か?よ~~しっ!」

 男は桃太郎の言葉に眼を輝かせて、鬼に向かって刀を構えました。

男は桃太郎に名前を聞いて貰う為に一生懸命になりました。

もはや、桃太郎と男の立場が決定しています。

「この鬼めっ!よく聞け!私の名前は・・・。」

『ウガーーーーーーー!!!!!!』

 と、突然鬼は男目掛けて突進して来ました。

又も名前を名乗れなかった男はビクンと身体を震わせると、

緊張の余り動けなくなってしまいました。

見かけどおり情けない奴です。

見る見るうちに鬼が近づいてきました。

「あわわわわわわ・・・・。」

 男は恐怖にガタガタと震えています。

勿論桃太郎は、手を貸すつもりは毛頭ありません。

絶望に追い込まれた男は、不意に全身に力が沸いてくるような

感覚に襲われ、体の緊張が解けました。

「おおっ!これは、天がワシに力を貸してくれたのだなっ!?

ようし行くぞぁ~~~~!!!」

 男は鬼に向かって、刀を振り回しながら、突進していきます。

「天に選ばれたワシの力を見るが良いっ!」

 男は、会心の一撃を加えるべく、鬼に刀を振り下ろしました。

 

ドガッ!!

 

男、宙を舞います。

 

 どうやら、天から力を貰ったという感覚は、ただの錯覚だったようです。

思いっきり腰から落下した男は、痛みの余り気絶しました。

「・・・。」

 桃太郎はその光景を見て、呆れの境地に辿り着き、

頭の中ではカラスが鳴いていました。

「情けない・・・。」

 あまりにも無様な男の様子を見て、桃太郎は思わず涙が出そうになりました。

そして、自分は桃太郎でよかったと、あの男でなくて本当に良かったと、

心のそこから思いました。

「仕方ないな・・・。」

 桃太郎は立ち上がり、団子の串を右手に持つと、

鬼に向かい合いました。

「お前なんか、この串で倒してやる。」

 なんと、細い串一本で鬼と戦おうと言うのです。

「ウガーーーーッ!!」

 鬼は馬鹿にされたことに、おおいに怒り、

今度は桃太郎目掛けて突進して来ました。

「ウガッ!!」

 思い切り棍棒を桃太郎に振り下ろします。

しかし、桃太郎はヒョイと攻撃をかわすと、

鬼の丸太のような腕に飛び乗り、

鬼の眉間にプスリと串を突き刺しました。

「アウッ・・・。」

 鬼の眼球がぐるりとあらぬ方向を向き、

そのまま真後ろにどっかんと倒れこんで絶命してしまいました。

もはや、桃太郎の強さは神がかりです。

「さて、本当に無駄な時間を過ごしてしまった。おい、ウオノメ行くぞっ!」

 何時しか眠りこけていたウオノメを起こし、

桃太郎は揚々と幌村へと旅立っていきました。

 

 しばらくして、鬼に吹っ飛ばされた男は目を覚ましました。

どうやら茶屋の一室のようです。

おばちゃんが介抱してくれたらしく、所々に薬が塗られています。

腰に鋭い痛みが走りますが、鬼にやられてこの程度で済んだのですから、

むしろ幸運と言っていいでしょう。

「眼が覚めたか?」

 素晴らしいタイミングでおばちゃんが現れました。

「あの小僧は・・・?」

 男は礼も言わずに問います。

「とっくに旅立って行っただよ。」

「そうか・・・。」

 男は諦めたように言いました。

「あそこまで力の差を見せ付けられたら、負けを認めるしかないな・・・。」

 勝手に清々しい気持ちになったのか、

男は晴れ晴れとした表情でつぶやきました。

「ところで。」

 おばちゃんはそんな男の気持ちなどまったく無視して言いました。

「あの坊やの団子とお茶の御代を頂いていないんだがね。」

「え?」

「あんたの介抱代と合わせて後で請求するから覚悟しておいで。」

 おばちゃん。冷徹です。

「な、なんで俺が!?いや、介抱代は良いとして、あの小僧の団子代は関係ないだろう!?」

「そういう細かいところに拘るから、名前も名乗れないような小物なんだよ。」

 ズバで痛いところをつかれた男は涙を流しながら心に誓いました。

「畜生!あの小僧絶対に許さんっ!どこまも追い詰めて絶対に勝ってやる!」

 もはや、何の勝負なのかも分かりませんが、

こうして、桃太郎におかしなライバル(?)が登場するのでした。

名前も名乗れないままに・・・。

 

 男が眼を覚ました頃、桃太郎とウオノメはついに幌村へと

辿り着きました。はたして、討伐隊の生き残りを仲間にすることが出来るのでしょうか?

ー続く。

 

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桃伝説 第7章

七章「ウオノメ」

 見事に鬼ノコを退治した戌彦。しかしながら、戌彦自信の痛手も大きく、

勝利を確信した後、その場にバッタリと倒れこんでしまいました。

「戌彦!」

 吾兵がすかさず駆け寄ります。

「ようやったぞ戌彦。見事な戦いじゃった・・・。」

 吾兵は愛しい孫を右腕に抱えながら、涙ながらに言いました。

「うう・・・お爺ちゃん。まぶしい光と大歓声を浴びながら戦っていた気がするよ・・・。」

 どうやら、あまりにも激しい戦いであった為、夢の世界に旅立っていたようです。

「で、でも、これで僕も役に立つことが分かった・・・。桃太郎についていくよ。」

「・・・駄目じゃ。」

 吾兵、ココまで来ても未だに許しておりません。

「なんでだよっ!爺っ!」

「それとこれとは話が違う。」

 吾兵、頑固の塊です。いや、頑固と言うよりは、孫離れできない駄目な爺です。

「てめえ!自分が活躍する場面が無いからって、僻んでんだろう!!」

「な、なにを言うか!!断じてそのような事は無いっ!」

 再び、戌彦VS吾兵が始まってしまいました。

桃太郎はそんな二人を遠巻きに見ていましたが、

いい加減に飽きたので、草むらに寝っころがって、うたた寝をしようとしました。

が、その時、桃太郎の目に死んだはずの鬼ノコがピクリと動く姿が飛び込んできました。

「おいっ!」

 桃太郎は叫びましたが、二人は言い争いに夢中で気が付きません。

「おいってばよっ!!」

 二人、気が付きません。桃太郎は立ち上がって刀を抜くと、

鬼ノコに向かって止めを刺すべく突進しました。

が、しかし、その前に鬼ノコは立ち上がり、身体に生えている

一際大きなキノコをもぎ取ると、言い争いをしている二人に向かって

投げつけました。キノコはゆっくりと二人の頭上へと飛んでいくと、

突然大きな音を立てて爆発しました。

「うわっ!!」

「ぬっ!!」

 爆発したキノコからは、臭そうな粒子が飛び散り、

二人に降りかかろうとしています。

とっさに戌彦は吾兵を投げ飛ばし、粒子から逃れさせましたが、

自分自身は避けきれずに、モロに粒子を浴びてしまいました。

「ぐへへ・・・浴びたな。」

 鬼ノコは息も絶え絶えに言いました。

「そのキノコの粒子にはある呪いが掛かっている。その呪いを解くことが出来るのは、

我らが総大将ろっ鬼ー様のみ!」

 鬼ノコはそういうと、真後ろにひっくり返りました。今度こそ息絶えたようです。

「ごほごほっ!」

 戌彦は苦しそうにむせ返っています。

「戌彦!!」

 思わず吾兵は駆け寄りました。みると、艶々だった戌彦の皮膚に、

獣のような毛が生えてくるのでした。

「な、なんだこれは!?」

 吾兵は驚き、思わず孫の腕を取ると、マジマジとその毛を観察しました。

「これは・・・明らかに人間のそれではない。まさに犬のような・・・。」

 そうしている間にも、毛はどんどん広がり、ついには身体全体にまで及ぼうとしていました。

「がぁぁぁぁ~~~~~!!!」

 戌彦は四つん這いになって悶え苦しんでいます。

「何とかならんのか!?桃太郎!!」

 吾兵は不可解な現実を眼にして、思わず桃太郎に助けを求めました。

「どうにもならんな。何が起こってるのかも分からん。」

 しかし、桃太郎は冷たく言い放ちます。まさに人事です。

成す術なく立ち尽くす二人の前で、戌彦は確実にその姿を変えていきます。

そして、数分後、戌彦だった少年は消え去り、

変わりにそこに現れたのは、真っ白な体毛を持つ一匹の犬でした。

 吾兵は犬になってしまった自分の孫を、とりあえず家に運びました。

変身の影響か、犬はピクリともせずに深い眠りに入っているようです。

「なんということじゃ・・・。」

 吾兵は悲しそうに犬の身体を撫でています。

「そう、悲観することは無い。奴らの総大将を倒せばいいだけのことだ。」

 桃太郎は相変わらず楽観的です。

「ろっ鬼ーと言ったか。ようやく敵の姿が見えてきたな。」

 どちらにしろ、桃太郎は鬼を退治するつもりなので、

結果的には戌彦の呪いを解くことになるのです。

楽観的なのにもしっかりと根拠があるのでした。

「じゃが・・・奴らを退治するのは、そう簡単ではない。」

 吾兵は悲観的です。

「桃太郎。こうなったら幌村の討伐隊に参加して、

一刻も早く鬼を退治してくれ!」

 吾兵は限りなく自分本位な考え方しか出来ないので、

歳の割には我侭言い放題でした。

「断る。」

 桃太郎は冷たく言い放ちます。

「な、なんじゃと?」

「俺様は討伐隊に参加するのではない。討伐隊そのものを

己の支配下におさめるのだ。勘違いしてもらっては困る。」

 何者にも属さない男。それが桃太郎です。

「な、なるほどな・・・。すまなかった。」

 吾兵はもはや桃太郎に逆らおうとはしません。

自らが及ぶ相手ではないと言うことを今更ながらに悟ったのでした。

(この男。器が多きすぎるわ・・・。)

 生きるために、桃太郎に逆らってはならないと言うことが、

身体に染み付いてしまったようです。

 

「さて。」

 桃太郎は立ち上がりました。

「いい加減に、そろそろ発つとしようか。少し長居しすぎたわ。」

 桃太郎は腰に刀を差すと、さっさと村を出ることにしました。

「そうか、名残惜しいが、誰もお前さんの行く手を阻むことは出来ぬ。

どうか、気をつけて行きなされよ。」

 吾兵は早くもオベッカを使い始めています。爺の癖に世渡り上手なようです。

「世話したな。(なってはいない)」

 桃太郎は、討伐隊の残党がいると言う幌村に向かいました。

後方には立派な栗の木が佇んでいます。

と、その時、栗村の方から、一匹の犬が桃太郎目掛けて走ってきました。

「戌彦!?」

 そうです。ついさっきまで死んだように寝ていた戌彦です。

別れの挨拶にでも着たのでしょうか?

「ワンワン!!(おいらも付いて行く!)」

 戌彦は必死になって桃太郎に意思を伝えようとしています。

「ワンワン!!(頼むから連れて行ってくれ!!)」

 桃太郎は少し考えると、自分流に、こう解釈しました。

 

『桃太郎様の為なら、何処まででも無償で付いていきます!

どうかお仲間に加えておくんなまし!!』

 

「見返りを求めずに力になろうとは、お前は中々良い奴だな。」

 桃太郎。変なところでケチです。

「だが、吾兵はどうする?あんなにも反対していただろう。」

「ワンワン!!(爺に付き合ってられない)

ワンワン!!(奴がウンコしてる今がチャンス!!早く行こう!!)」

 このワン公も中々やるようです。

「そうか、じゃあ共に行こう。」

 桃太郎は、いつしか犬語をマスターしていました。流石は主人公です。(関係ないです)

 

 栗村から歩くこと数時間。桃太郎はふと立ち止まりました。

「そういえば、お前犬になったのに戌彦って名前なのもおかしいな・・・。」

「ワウ?(そう?)」

「だって、人間が(人男)です。って言ってる様なもんだろう?」

 確かにそうです。

「よし、ここは俺様がすばらしい名前をつけてやる。」

「ワウワウ♪(わくわく♪)」

 桃太郎は少し頭をひねって考えましたが、

すぐに何か閃いたのか、笑顔で戌彦にこう言い放ちました。

「よしっ。じゃあ、これから宜しくな(魚の目)」

「ワウ・・・?(魚の目・・・?)」

「そうだこれからお前の名前は魚の目だっ!」

 

名前を付ける際のセンスの無さは、お婆さん譲りな桃太郎でした。 

 

 戌彦は全力で嫌がりました。

そんな名前を付けられた日には、絶望で何もする気が起きないってもんです。

「わかったわかった。漢字は嫌なんだろう?じゃあ、ウオノメ。カタカナなら良いだろう。」

 

 桃太郎は観点がずれています。

 

 嫌がる戌彦・・・いや、ウオノメを完全に無視して、

桃太郎は幌村へと歩を早めるのでした。

 

 こうして、桃太郎は最初のお供である犬を従えることに成功するのでした。

ー続く。

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桃伝説 第6章

六章「好敵手」

 タララッタララッタララッタララッタラ~ラララ~ラララ~ラララ~ラ。(PRIDEのテーマ)

今、まさに全人類の注目する戦いが始まる。

 

西に陣取るは、世界を恐怖に陥れた鬼軍団の刺客「鬼ノコ」。

全身にキノコを生やすその姿は、見るだけで相手の戦意を喪失させてしまう。

恐ろしい巨体から繰り出される攻撃は、今日もKOの山を量産するであろう。

「戌彦よっ!今日がお前の命日だっ!」

 鬼ノコは今日も標的に狙いを定めてる・・・。

 

 対するは、栗村に突如として現れた神速の戦士「戌彦」。

桃太郎すらも凌駕するといわれているその速さは、

相手に触れることすら許さない。

桃太郎に生涯初の黒星を喫するも、その戦闘能力は疑うところ無しっ。

「いつもの調子を出せば、決して怖い相手ではないです。

勝てるでしょ。普通に。」

超新星「戌彦」。勝利をもぎ取れっ!

(以上、PRIDEのオープニングの気持ちでお読みください。

以下、PRIDEの実況の気持ちでお読みください。)

 

 さぁ、ついに始まりました。鬼ノコvs戌彦。

本日の実況は私吾兵。審判に村人佐助。

解説にはつい先日、戌彦選手と激闘を繰り広げた

桃太郎選手にお越し頂いております。宜しくお願いします。

「宜しくお願いします。」(桃)

 ついにこの時が来ましたねぇ~。ファンが一番望んでいたカードなんじゃないですか?

「そ~ですね~。鬼ノコ選手のパワーと匂いを、戌彦選手がどうさばくかが見ものです。」

 戌彦選手といえば、桃太郎選手も随分と苦戦を強いられたんじゃないですか?

「はい。彼の速さは世界でも間違いなくトップクラスに入ると思います。

鬼ノコ選手は如何にして戌彦選手を捕らえるかが勝利の分かれ目になると思います。」

 おっと、始まりました。第一らうんど。

戌彦選手。鬼ノコ選手に絡めた鎖を解き放ちましたね。

分銅をグルグルと振り回して距離を取っています。

「良いですね。この距離で戦えばカウンターも喰らうことが無く、

安全に戦えるでしょうね。」

 なるほど、戌彦選手の勝機は何処にあると思いますか?

「遠い間合いからの攻撃が、彼の最大の勝機になるでしょうね。

僕と戦ったときは間合いを寄せすぎて、それが敗因となりましたから、

かなり自分自身を研究してきていると思います。」

 つまり、近づいてはならないと?

「そうですね。近い距離では、鬼ノコ選手の強烈な臭いをもろに嗅いでしまいますから。」

 力よりも臭いですか?

「力よりも臭いです。」

 さて、戌彦選手、分銅の回転スピードを上げてきました。

いよいよ、攻撃に出るのでしょうか?

「いや、まだまだお互いに様子見だと思いますね。」

 両者共に慎重です。さぁ、ファーストインパクトは何時になるのかっ・・・

あ!・・・あ・・・おっと!戌彦選手!分銅です。

凄まじい速さで鬼ノコ選手に攻撃を仕掛けました。

鬼ノコ選手、紙一重でかわしましたっ。

危ない危ない。今、本当に当たりかけましたね~。

「あれは当たったら一発で意識を持っていかれますから注意が必要です。」

 小さな身体に、恐ろしい大砲を秘めている戌彦選手。

しかし、それをかわす鬼ノコ選手もやはり並みの戦士ではなかったかぁ~!

おっと、二人の距離が少しずつ近づいてきたぞ?

「いよいよ動きますね。」

 気が付けば、第一らうんども残すところ30秒。

あっという間ですねっ!

「早いですね~!(笑)」

 !!!!!!っあああぁぁぁぁ!!!ダウンッ!!ダウンッ!!

鬼ノコ選手ダウンですっ!!不意の分銅攻撃が鬼ノコ選手の

即頭部にモロに入りましたっ!これは立てないか~~~!?

「あ~~、これは決まりかな~~?」

 佐助のカウントが入ります!さぁ、立てるか!

懸命に立ち上がろうとしている鬼ノコ選手!

足元がふらついているぞ!?

カウントは無常にも進んでいく~~!

あ!たっ、立ちました!恐ろしい精神力!

「タフですねぇ~。並の選手なら普通立てませんよ?」

 そこはやはり、自分は鬼だというプライドがあるんでしょうね~。

一発ではやられないと。

「見習いたいですね。」

 おっと、ここで第一らうんどが終了です!

桃太郎選手の採点は 10対8 戌彦選手が取っています!

一旦CMです。

ーーーーーーーーーーーーーCMーーーーーーーーーーーーーー

勝ちたいときにはきび団子!!(改)

キビ!キビ!キビ!キビ!きび団子!!(改)

 

キビの成分・数種類の生薬が疲労に効く!

 

勝ちたいときにはきび団子!!(改)

キビ!キビ!キビ!キビ!きび団子!!(改)

 

きび団子GOLDもでた!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 さぁ、CMが明けて、どうですか?桃太郎選手。

鬼ノコ選手のダメージはやはり抜けきっていないでしょうかね?

「少しの休憩じゃ抜けないでしょうね。」

 厳しい展開となっております。ここから逆転を狙えるか!?

始まりました第二らうんど!!

ああぁぁ~~~っと!!戌彦選手!ここぞとばかりに速攻です!

これは、桃太郎選手との戦いの時に見せた、連続攻撃~~~~~!!!

「勝負を掛けて来ましたね。」

 鬼ノコ選手防戦一方!!決まるか!?決まってしまうのか!?

くぁwせdrftgyふじこ!!!!なんと~~~~!!!!!

戌彦選手ダウ~~~~~~ン!!!!

鬼ノコ選手のカウンターが決まってしまったぁ!!!

桃太郎選手いまのは一体!?

「口臭攻撃ですね。近づく戌彦選手に向けて凄まじい臭気を発したのです。

思わず鼻を摘んでしまったところに突きが入りましたね。」

 さぁ、形勢逆転!今度は戌彦選手が窮地に立たされている!

佐助のカウントが進むぞ!!

立てるか!?立てるのか!?

「攻め気に出たのが裏目に出てしまいましたね。」

 ぉおっとぉ~!立ちましたっ!戌彦選手っ!

目線が定まっていないぞ!?出来るのか!?

・・・やる気です!!ファイティングポーズを取りました!

続行です!!

「素晴らしい!」

 両者共に疲れています!

鬼ノコ選手も追撃に行けません!

お互いに距離を取って回復を図っています!

「ここで行って欲しいですね~。自分が辛い時は相手も辛いんですから。」

 しかし、無常にも時間は過ぎていくぅ!

ここで第二らうんど終了です!一旦CMに入ります!

このらうんどは 10対8で鬼ノコ選手が取っています!!

ーーーーーーーーーーーーCMーーーーーーーーーーーーーー

「ふぅあいとぉ~~~~!!」

 

「っいっぷぁ~~~つっ!」

 

肉体疲労時の栄養補給に

きび団子A~~~~~!!

 

お婆製薬です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 さぁ、ここまではお互いに一進一退の展開。

お互いに一度ずつダウンを喫するという激闘です。

いよいよ、ふぁいなるらうんど!!

勝利の女神が微笑むのは鬼ノコか!?それとも戌彦かっ!?

おお!!鬼ノコ選手出てきました!!

臭いを武器に豪腕を繰り出していきます!!

戌彦選手!手が出ません!!

「危ないですねっ!」

 鬼ノコ選手もKOでのはっきりした勝ちを狙ってきています! 

ここから戌彦選手の逆転はあるのか!?

ああっと!ダウン!!ダウン!!

戌彦選手倒れてしまった!!

これは決定的か~~~!?

鬼ノコ選手!勝利を確信したか!?

両手を挙げて勝利をアピールしております!!

佐助もカウントの必要があるか見定めている!!

・・・おや?

鬼ノコ選手の様子がおかしいですね?

「首に鎖が絡まっていますね。」

 本当です!!何時の間に仕掛けたのか、

戌彦選手の鎖鎌が、鬼ノコ選手の首にしっかりと

絡み付いております!!

これは苦しいっ!!

「何時の間に絡めたんでしょうね?まったく見えませんでした。」

 神速の戦士戌彦の本領発揮か!?

ここで、戌彦選手が立ち上がりました!!

ギリギリと締め上げていきます!!

鬼ノコ選手!必死に鎖を解こうとしていますが、

しっかりと首に巻きついて離れません!!

落ちるかっ!落ちてしまうのか!?

あああ!!!鬼ノコ選手、ゆっくりと倒れこんだ!!

落ちてしまいました!!

カウントを取る事無く、佐助が戌彦選手の勝利を高々と宣言しました!

戌彦選手!勝ちました!勝利です!!!

「いやぁ、凄いっ!戌彦選手凄いっ!感動しました!!」

 興奮冷めやらぬ、ここ栗村から生放送でお送りいたしました。

本日は戌彦選手が感動的な大勝利を収めました。

桃太郎選手、本日はありがとうございました。

「ありがとうございました。」

 それでは、次回のPRIDEまでごきげんよう、さようならっ!

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桃伝説 第5章

五章「鬼来襲」

「!!」

 突如、腹部に襲い掛かった痛みで、戌彦は眼を覚ましました。

そこは見慣れた自分の部屋で、彼は布団の上に寝ていました。

確か、自分は桃太郎と戦っていたはず・・・。

記憶が途中からプッツリと途切れており、今に至るまでに

どれぐらいの時間が過ぎたのかも分かりません。

痛みを堪えながらも、窓から外を眺めると、村人が畑のあぜ道に腰掛け、

食事をしている光景が眼に入りました。どうやら、昼はまわっているようです。

状況が掴めずに辺りを見渡すと、閉じられた戸の向こう側から

人の話し声が聞こえてきました。吾兵と、桃太郎のようです。

戌彦は息を殺して会話の内容を聞き取ろうとしました。

 

 家の壁には数本の刀が掛けられていました。

どれも相当使い込まれているようです。桃太郎は何気なく

刀を見つめながら、吾兵に今までの経緯を話していました。

「なるほどな・・・。それで、これからどうするつもりじゃ?」

 一通り桃太郎の話を聞いた吾兵は桃太郎に問いました。

「そうだな。達人といわれたアンタも、今では唯の子煩悩な爺に成り下がって

いるようだし、もう、この村には用は無いさ。」

「そうじゃな。残念ながらワシにはもう、往年の力も気持ちも無い。

お前さんに着いて行くことも出来んさ。」

 吾兵は諦めているといった表情でボソッと呟きます。

「来たばっかりで残念だが、俺には余計な時間は無い。

他の村に行ってみる。」

 桃太郎はそう言うと、立ち上がりました。

「まぁ、待て。そう急ぐでない。少しは爺の話も聞け。」

 吾兵は桃太郎を諌めます。

「ここから西へ三日ほど行った所に幌村という集落がある。

大きな声では言えんが、討伐隊の生き残りが潜んで居るらしい。」

「ほう。」

 桃太郎は興味を示したのか、再び胡坐を組んで座りました。

「たかだか十数人の集まりらしいが、それでも、それなりの使い手の集まりだと聞く。

中でも三人の頭目はかなりの豪傑だと聞くぞ。」

 吾兵は楽しそうに話します。やはり、戦闘に関しては今でも心が躍るようです。

「一人は槍の名手だという。十字槍を使いこなし、討伐隊では一番の功績を挙げたと聞く。」

 吾兵はポリポリと頭をかきます。

「そしてもう一人は弓の達人。最後は無手の達人らしいぞよ。」

「無手だと?珍しいな。」

 この時代。無手(素手で相手を倒す、いわゆる現在の徒手空拳)は、

圧倒的に得意とするものが少なかったのです。

殺傷力の強い槍や刀に比べて、間合いが短く、

狙いどころを間違えると相手に付け入る隙を与えやすい無手は敬遠されていました。

「三人の頭目か。面白いかも知れんな。」

 桃太郎は再び立ち上がると、置いてあった愛刀を腰に差すと、

出口へと向かいました。

その時、戌彦の部屋の戸が突然開き、中から戌彦が血相を変えて

飛び出てきました。

「待って!!おいらも連れて行ってくれ!!」

 戌彦は必死の表情でそう叫びました。

「戌彦!何を言うか!」

 吾兵はおおいに驚き、叱り飛ばしました。

しかし、戌彦の耳には届いて居ません。爺無視されています。

「僕、父ちゃんと母ちゃんの敵を討ちたいんだ!お願いだから連れて行っておくれよ!」

 言うが早いか、壁に掛けてあった鎖鎌を手にして言いました。

「これでも、お爺ちゃんよりかは役に立つよ?足手まといにはならないから!」

「がーーーん!!」

 吾兵ショックです。爺がショックを受けています。G-SHOCKです。

桃太郎は突然の事に呆気に取られていましたが、

戌彦の戦闘力は確かに役に立つと思っていました。

「好きにしろ。だが、生死の保障は出来んからな。」

 冷たく言い放つも、今朝、激闘を繰り広げたこの少年に対して、

多少の親しみを感じていたのも事実でした。

「いかーーーーーん!!」

 吾兵の怒声が響き渡ります。

「絶対に許さんぞ!戌彦!お前は、お前だけには戦いはさせられん!」

 吾兵は戌彦から鎖鎌を取り上げました。

「なんでだよう!?僕だって鬼を許せないんだ!」

 戌彦は吾兵から鎖鎌を取り返しました。

「そんな危険な旅に見す見す可愛い孫を出せるものかっ!」

 吾兵は戌彦から鎖鎌を取り上げようとしました・・・が、

あっさりと交わされて壁に激突しました。両方の鼻の穴から

鼻血が出ていますが、意にもしていない様子で、再び戌彦に襲い掛かります。

しかし、戌彦の洗練された動きには到底着いて行けないのでした。G-SHOCK2です。

 桃太郎はそんな二人を見ていて、馬鹿らしくなったのか、一人で外に出ました。

天高く、煌々と輝く太陽は今日も大地を焦がしています。

そんな中、突如村のどこかで女の悲鳴が上がりました。

「誰か!!誰か!!鬼が出たーーー!!」

 桃太郎は即座に悲鳴のあがった方へ走っていきます。

ついにこの辺境にまで鬼の手が伸びてきたのです。

「面白い・・・。」

 桃太郎はニヤリと笑うと、腰の刀を抜き放ち、凄まじい速さで

駆けていきました。一方、吾兵と戌彦は不毛な戦いに夢中で、

悲鳴に気が付いていませんでした。

 桃太郎が村の東の入り口に辿り着くと、そこには本当に鬼がいました。

桃太郎の3倍はあろうかという巨躯の持ち主で、

なぜか身体の至る所にキノコが生えています。

そして、なによりも物凄い悪臭を放っていて、とても近づく気持ちにはなりませんでした。

鬼は、村人には興味を示さず、ある家に干してあった女性の下着を必死に

盗もうとしていました。臭い上に下着泥棒という、とても濃い(あらゆる意味で)鬼です。

桃太郎は、飽きれて戦う気も無くなりそうになりましたが、

とにかく臭いので、さっさと片付けようと思いました。

「お”い”」

 桃太郎は鼻を摘みながら鬼に話しかけます。

しかし、鬼は下着に夢中でまるで話を聞いていません。

カチンと来た桃太郎は不用意に鬼に近づきました。

「おでに近づくなぁ~~~!!」

 鬼は突然振り返ると、桃太郎を威嚇するように大声で怒鳴りました。

桃太郎はその大声よりも、鬼の口臭にやられました。

恐ろしいほどの悪臭です。思わずクラッときましたが、

なんとか、意識を繋ぎ止めると、必死に鼻を摘みながら

鬼に向かって刀を差し向けます。

「ぎざば(貴様)、名をなどで(名を名乗れ)!」

 鬼は豪快に笑いながら言いました。

「おでの名前は鬼ノコ!正拳突鬼さま直属の鬼だぁ~!」

 鬼ノコと名乗った鬼・・・。まるっきりそのままです。

桃太郎は、鬼ノコに生えているキノコが、先天的なものか後天的なものなのか、

とても気になりましたが、鬼ノコの不潔そうな身体を見て、

絶対に後天的だという結論を出していました。

そんな、どうでも良い事を、相手に戦いの最中に考えさせてしまう辺り、

この鬼ノコ、只者ではありません。

事実、桃太郎はこの鬼に近づきたくありませんでした。

何しろ臭いからです。どうやって倒そうか、桃太郎が思案していると、

後ろから戌彦と吾兵がやってきました。

ようやく鬼ノコの存在に気が付いたようです。

「うわ!臭い!」

 戌彦は思わず叫びました。

「うむっ!臭いのう!」

 吾兵も叫びました。

「本当に臭いっ!」

 桃太郎も改めて叫びました。

「・・・。」

 鬼ノコ、三人から一気に臭いと叫ばれて、泣きそうになっています。

「お!おでは臭くねぇ~~~!!!」(や、臭い)←筆者

 両目から涙を流しながら、鬼ノコは三人に突進してきました。

「わーーー!!!」×3

 桃太郎たちは、ある意味本気で逃げました。

鬼ノコは、決して追いつかれるような速さでは居ってきませんが、

それでも、臭さの範囲が広いので、三人とも必死です。

はっきり言って、今のところ鬼ノコ最強です。

「こ、これじゃあまともに戦えやしないっ!」

 桃太郎は意を決して、空気を大きく吸い込み、それから呼吸を止めると、

立ち止まって鬼ノコ目掛けて刀を振りかざそうとしました。

「!!」

 

 臭いが眼に沁みました。

 

 桃太郎はボロボロと涙を流しながら再び逃げます。

「鬼がこんなに恐ろしいものだったとは・・・。」

 やはり、天下統一の野望は困難であることを改めて感じています。

と、その時、鬼ノコは足に何かが絡みつき、思い切り転びました。

よく見ると、それは鎖でした。

 鬼ノコは足に絡みついた鎖の先を眼で追いました。

すると、その先には鼻を摘んだ戌彦が佇んでいます。

ギリギリ臭いに耐えられる距離から、鎖鎌の射程を利用した攻撃を繰りだしたのです。

「ここは僕に任せてっ!」

 戌彦VS鬼ノコの戦いが始まりました

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桃伝説 第4章

四章「真剣勝負」

 刀を構える桃太郎。鎖鎌を構える戌彦。

二人の間に緊張が張り詰めます。吾兵は言葉を発することが出来ず

戌彦の背中を、ただ呆然と見詰めています。

「はっ!!」

 桃太郎が仕掛けました。なんの小細工も無い真正面からの攻撃です。

まるで津波のような圧倒的な迫力とともに、強烈な一撃を繰り出しました。

しかし戌彦は鎖を使ってうまく攻撃を受け流します。

桃太郎の直線的な動きを、円の動きで鮮やかにやり過ごしています。

両手に持った鎖を緊張させずに、ある程度の緩みを持たせることで、

刀の衝撃を柔らかく受け止めると、そのまま力に逆らわずに刀を逃がすのでした。

「やるなっ。」

 桃太郎は楽しそうです。尽く攻撃をかわされながらも、

その表情に焦りの色はありません。

それよりも、これ程の使い手が隣村に潜んでいたことに驚いています。

(こんな奴らがあちこちに居るようでは天下統一の野望もそう簡単には行かぬな・・・。)

 桃太郎は改めて己の道の険しさを実感していました。

しかし、それでこそやり甲斐がある。

桃太郎はいつでも自信に満ち溢れています。

 それに対し、戌彦は桃太郎の攻撃を受け流すことに精一杯でした。

祖父である吾兵からは一度も戦闘において教えを貰ったことはありませんでした。

戌彦の両親は札村に住んでいたのですが、父親は討伐隊に参加し討ち死に、

札村陥落の際、戌彦と共に落ち延びてきた母親も程なく病死しました。

この時戌彦はまだ5歳。両親を失った幼子を、吾兵はそれはそれは

大事に育て上げてきたのです。

吾兵は可愛い孫には平和に生きて欲しかったのでしょう。

戌彦が戦闘の真似事をする度に厳しく叱り飛ばしてきました。

しかし、戌彦の強くなりたいという想いは強く、一人鍛錬を続けていたのです。

そして、月日は流れ、11歳になった戌彦は立派な戦士へと成長しました。

恐らく、戌彦の見事な戦いぶりに一番驚いているのは吾兵でしょう。

天性の勘とも言うべきか、戌彦は吾兵の動きよりも遥かに洗練されていたのです。

「えいっ!」

 戦いが始まってから、ずっと受けに徹していた戌彦がついに攻撃に転じました。

分銅が凄まじい速さで桃太郎を襲います。まともに当たれば一撃で骨が砕け、

当たり所が悪ければ即死に至ります。桃太郎は最小限の動きで分銅をかわし、

鎖を左手で捕まえました。驚くべき動体視力です。しかし、次の瞬間に戌彦は神速を

用い、鎌を右手に特攻してきました。桃太郎は右手の刀でそれを受け止めます。

刀と鎌がぶつかり合い、薄暗い明け方の栗村に、美しい火花が飛び散りました。

「はははっ!」

 桃太郎は本当に楽しそうです。まるで、目の前の強敵を喜んで受け入れているようでした。

「へへっ・・・。」

 戌彦もまた、笑みを零しています。初めて対決する強敵に愛情すら持ち始めています。

二人はまるでじゃれ合うかのように攻防を繰り広げ続けています。

そこにはもう、吾兵の入る余地などありませんでした。

「戌彦・・・。」

 吾兵の中で、愛しい孫が修羅の道に入り込んでしまった悲しみと、

一流の戦士として成長した孫をもった誇りが混ざり合い、

気付かない内に両目から涙が溢れ出ていました。

 桃太郎と戌彦はお互いに一歩も譲らず、互角の勝負を繰り広げていました。

しばらくして、戌彦は桃太郎との間合いを取ると、一息ついて言いました。

「そろそろ、本気を出させてもらうよ。」

 自信ありげな笑みを浮かべます。

「面白い。」

 桃太郎も負けてはいません。

吾兵は驚きました。これまでの戦いは二人にとって準備運動に過ぎなかったとでも

言うのでしょうか?もはや、常人が及ぶところではありません。

 それにしても、この戌彦。何故にここまで優れた戦闘力を持ちえたのでしょうか。

実は戌彦の父は討伐隊の中でも特に優秀な戦士であり、

特に、その速さは彗星の異名を持つほどだったのです。

戌彦もまた、父の血を余すところ無く受け継ぎ、戦闘の達人であった祖父の

姿を毎日見ていくうちに、いつしか戦闘の才能を開花させたのでした。

桃太郎と戌彦。育った環境は違えど、戦闘においては一流の土壌で育っていたのでした。

「いくよ~!」

 戌彦は姿勢を低くすると、鎖鎌を構えて、凄まじい速さで桃太郎に突進しました。

それこそ今までとは段違いの速さです。瞬きする暇すらありません。

「くっ!」

 桃太郎は何とか反応し、攻撃を受け止めます。しかし、次の瞬間には、

戌彦の姿は既に眼前にはなく、気が付くと桃太郎から数十歩離れた

場所へ跳んでいるのでした。そして、すぐにまた同じ速さで突進してきます。

攻撃しては離れ、離れては攻撃をする。息つく暇も無い連続攻撃に

流石の桃太郎にも余裕の色は見えませんでした。

一旦攻撃を止め、戌彦はクスリと笑いました。

「凄いねぇ。まさかこの攻撃を凌がれるなんて思ってもみなかったよ。

でも、いつまで防ぎきれるかな?」

 得意気に分銅を振り回しながら、戌彦は言いました。

勝利を確信し始めているようです。確かに桃太郎は防戦一方です。

しかしながら、その瞳からはまだ輝きが失われてはいません。

「おまえ、もしかして勝った気分でいるのか?だとしたら滑稽も良い所だぜ。」

 桃太郎はまるで堪えていないと言う風に肩をぐるぐると回しています。

「確かに速い・・・が、お前の攻撃の軽さは致命的だな。速いだけの攻撃なら

幾らでも出来るんだよ。」

 桃太郎は左手で持った刀を戌彦に差し向けると、右足を下げて半身に構えました。

「へぇ、面白いじゃない。出来るもんならやってみなよっ!」

 戌彦は再び桃太郎に突進しました。しかし、次の瞬間桃太郎の姿が一瞬にして

消えてしまいました。

「!!」

 驚いた戌彦は突進を止めると、桃太郎の姿を探しました。

しかし、前にも左右にも姿がありません。

「後ろだ。」

 不意に戌彦の耳元で声がしました。そして、腹部に強い衝撃が走り、

戌彦は意識を失って倒れこんでしまいました。

凄まじい速さで戌彦の背後に回りこんだ桃太郎が、

逆刃に持った刀で当身を繰り出したのです。

 

こうして、桃太郎と戌彦の壮絶な戦いは、

桃太郎に軍配があがったのでした。

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桃伝説 第3章

三章「伏兵」

 栗村に辿り着いた桃太郎。もう、夜も遅く、村に人影は見られませんでした。

流石の桃太郎も疲れ果て、栗の木の下に座り込みました。

「腹が減ったな・・・。」

 流石に飲まず食わずで半日近く走って来たので、

胃が抗議の音を立て続けています。桃太郎は枯れ木を集め、

村の松明から火を貰うと、焚き火を始めました。そして、村の井戸から水を汲むと、

陶器で作られた小さな土鍋(携帯用)にお湯を沸かしました。

桃太郎は、腰の袋からきび団子(改)を取り出すと土鍋の中に放りこみました。

およそ3分で美味しいホカホカ団子の出来上がりです。

「ちくしょう。あの小僧・・・。必ず見つけ出してギタギタにしてやる・・・。」

 未だに桃太郎は怒りが収まりませんでした。

何しろコケにされたのは産まれて初めてです。

長村では、あのお婆さんの子供という事で恐れられていたのです。

まったくもって主人公とは思えません。

 桃太郎はきび団子(改)をあっという間に平らげると、

木を背にして仮眠を取る事にしました。

「明日の朝、あの小僧を見つけ出して、寝込みを襲ってやる。」

 勝つためには卑怯な手も辞さないその姿勢は、

彼が討伐しようとしている鬼のようです。

まぁしかし、彼にとっては、鬼が邪魔なだけで、決して正義の味方ではないので

別にどうでも良い事でした。

まったくもって主人公とは思えません。(マジで)

 

 桃太郎は2~3時間ほど眠ると、まだ薄暗い村の中に入って行きました。

流石に起きている者はおらず、村はひっそりとしています。

 桃太郎は村の家を一軒一軒覗いて、あの少年を探しました。(変態)

そして、ついに少年が眠る家を見つけました。

(くくく・・・見つけたぞ。)

 腰の刀を抜き放つと、気配を消して家の中へと忍び込みます。

その刹那、桃太郎は家の暗闇の中に凄まじい殺気を感じ、反射的に後ろへ

飛び退りました。見ると、桃太郎の居た所に一人の老人が立っています。

「なんだ貴様は!!」

 桃太郎は刀を構えながら怒鳴りました。

「お前さんこそ、こんな時間になんの用じゃ?」

 もっともな事を言われて、桃太郎は黙りました。

「まるで人を殺しに来たかのような殺気じゃな。」

 老人はゆっくりと家の外に出ると、桃太郎をマジマジと見つめました。

「なんと、まだ子供ではないか。どうすればあのような殺気を発することが出来るのやら。」

 桃太郎は背筋に汗を感じました。完全に殺気を消したつもりが、

この老人には僅かに残った殺気を鋭い感性で感じ取られていたのです。

「ただ者じゃないなジジイ。名前はなんと言う?」

 桃太郎は身体の緊張が解けません。

「ワシの名前は吾兵。ただのジジイじゃよ。」

「吾兵だと?その名前どこかで聞いたことがあるな。」

 桃太郎は考え込みました。確かにどこかで聞いたことのある名前です。

記憶の引き出しを一つ一つ探して行きます。

すると、ある一つの引き出しから吾兵の名前が見つかりました。

「思い出したぞ!貴様、婆に斬られたという栗村の剣の達人だな!」

 吾兵と名乗った老人は懐かしそうに髭をさすりました。

「ほぉ、婆とはもしや長村の婆かのぉ?お主、あの婆の孫かいな?」

 桃太郎は頷きました。実は血は繋がっていないのですが、

桃太郎は知らされていませんでした。

「なるほど。それであの殺気も納得がいく。婆は息災か?」

「貴様、息絶えたのではなかったのか?」

 桃太郎は吾兵の質問をあっさりと無視しました。

「残念ながら、こうして生きて居るわ。幸い急所は外れておったからの。」

 桃太郎は驚きました。あのお婆さんがそんな失敗をするわけがありません。

狙った獲物は必ず仕留めるのがお婆さんの凄いところです。

(わざと外したのか・・・。何故だ?まさか惚れてたのか、この爺に。)

桃太郎、飛躍中です。

「名はなんという?」

 吾兵は優しそうな声でたずねてきます。

「桃太郎。」

「桃太郎・・・?」

 吾兵は驚きました。

(まさか、あの桃から産まれ出でた赤子か?こいつは驚いたわい。)

 吾兵、根拠も無いのに勝手に驚いています。

「そうかそうか・・・。」

 吾兵はこれまた勝手に納得しています。

「ところで、桃太郎よ。」

「なんだ?」

「婆は息災か?」(2回目)

  その時、家の中から少年が現れました。眠そうに目を擦っています。

「・・・こんな時間に、何騒いでるのさ。うるさいなぁ。」

「あ!貴様!」

 桃太郎は少年を確認するや否や、突然切りかかりました。

「わぁっ!」

 少年は思わず後ろに倒れこみます。

「貰った!!」

 

ジャリッ!!

 

 少年に馬乗りになり、まさに刀を振り下ろそうとしたその瞬間、

桃太郎の刀に一本の鎖が巻き付いてきました。

「!!」

 桃太郎は驚いて、刀から伸びている鎖の行方を目で追いました。

鎖の先では吾兵が必死になって鎖を引っ張っています。

「くっ!まったく末恐ろしい子じゃな・・・。何という速さじゃ。」

 左手で鎖を引き、右手には鎖に連結された鎌を持っています。

「鎖鎌か・・・。珍しい武器を使うな・・・。」

 桃太郎は呟きました。こと、戦闘に関しては無限の知識を持つ桃太郎です。

蝦夷国ではほとんど使い手のいない鎖鎌の知識も豊富です。

(鎖の端に繋がれた分銅は一撃で頭蓋を砕く破壊力。

そして、分銅のもう一端に繋がれた鎌は刀以上の切れ味。・・・厄介だな。)

「爺、この俺とやるつもりか?今度こそ死ぬぞ?」

「くくく、そいつはどうかな?お前さんの婆に斬られたおかげで、

もう刀は持てぬが、この鎖鎌の扱いもそれなりじゃぞ?」

 吾兵は自身ありげに薄ら笑いを浮かべます。

久々の戦いに血が騒いでいるようです。

桃太郎は腕を振るうと、鎖から刀を解き放ちました。

「いいだろう。今度こそあの世に送ってやる。」

 正眼に構えると、慎重に間合いを計りました。

その時、少年の声が響き渡りました。

「もう、やめてくれよっ!お爺さんも、いい加減にしてっ!」

 吾兵はまるで憑物が落ちたかのように穏やかな表情に戻りました。

桃太郎との間に生じた緊張感が、ふっと消えました。

「だまれ貴様。」

 桃太郎はいまだ刀を構えたまま、少年のほうを振り返ることも無く

冷たく言い放ちます。そして、緊張の解けた吾兵に切掛りました。

「!!」

 一瞬の反応の遅れから、吾兵は桃太郎の刀を受けきることが出来ず、

鎌を手放してしまいました。そして、よろめき倒れました。

「とどめっ!!」

 桃太郎は吾兵の胸に目掛けて刀を振り下ろします。

しかし、刀は吾兵がたった今倒れていた地面に突き刺さりました。

一瞬にして吾兵の身体が消えたかのようです。

すぐさま体制を整えた桃太郎の前に、少年が佇んでいました。

少年は背後に吾兵を庇うように両手を広げて仁王立ちです。

(今の一瞬で・・・どうやって?)

 桃太郎は理解を超えた現実に面食らっています。 

目にも見えぬほどの速さを、この少年は身に着けているとでもいうのでしょうか?

「戌彦・・・。」

 吾兵は少年の背中を呆然と見詰めています。

「お爺ちゃんを傷つける奴は、僕が許さないっ!」

 戌彦と呼ばれた少年は双眼に怒りの炎を灯しています。

そして、足元に落ちている鎖鎌を拾い上げると、

左手で鎌を持ち、右手に分銅のついた鎖を持ちました。

ブンブンと音を立て、分銅を振り回しながら、桃太郎と対峙しました。

「やろうってのか。上等だ。」

 桃太郎はニヤリと笑うと、刀を構えました。

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桃伝説 第2章

2章「疾走」

 熱い夏のある日。桃太郎の13回目の誕生日が訪れました。

日頃の鍛練が実を結び、剣術や体術、その他もろもろ、

戦闘能力において、長村で桃太郎に敵う者は居ませんでした。

戦闘の師である、お婆さんとお爺さんも、桃太郎の実力は蝦夷国においても

5本の指に数えられると確信していました。

 そしてある日、天下統一の野望を胸に、ついに桃太郎は

村を旅立つ覚悟を決めたのでした。

「機は熟した。今こそ旅立つときっ!」

 今日も、桃太郎の目には野心の炎が燃え盛っています。

 

 この頃、猛威を振るっていた鬼達は、蝦夷国のほぼ全域に

勢力を広げており、偏狭の小さな村を除く、主要な村の全てを

支配下に置いていました。それぞれの村に監督官の鬼を置き、

人間達に過酷な税と労働を課していました。

 人間達の希望であった討伐隊も既に瓦解しており、

生き残った勇士が各地で小さな叛乱を起こす程度になっていました。

 桃太郎は考えました。

(鬼が居る限り、俺様の覇道は成らん。まずは各地の討伐隊の残存兵力を

結集して、鬼軍団に対抗しうるだけの組織を作り上げなければ・・・。)

 桃太郎は身支度を整えると、お婆さんとお爺さんの元を訪れ、

旅立ちの挨拶をしました。太陽がまさに昇ろうとしている時間です。

「お婆さん。お爺さん。今まで育ててくれて本当にありがとう。

僕は、鬼退治の旅に出ます。鬼を許すことは出来ません。」

 桃太郎は、良い子オーラバリバリの、キラキラeyeでそう言い放ちました。

なぜなら、この育ての親こそ、桃太郎にとって一番敵に回したくない

人物であるからです。

(こいつらが敵に回ったとき、この俺様の覇道の、最大の妨げとなる。)

 師匠の実力を最もよく知る桃太郎です。

しかし、お婆さんは桃太郎の瞳の奥に宿る野心の火を見落としません。

「桃太郎や。安心おし。あたし達はお前の邪魔をする気は無いよ。

これでもあんたの味方のつもりさ。思いっきり暴れておいで。

そして、見事鬼を討ち果たし、この国を飲み込んでおしまい!」

 お婆さんは寛大な台詞を吐きます。お爺さんは丁度、夢の世界に

旅立っている間最中だったので、桃太郎のことは眼中にありませんでした。

「まずは仲間を集めるんだね。隣村の栗村に剣の達人がいるそうだ。

お前なら力になってくれるかもしれん。まずは北に向かいな。」

 お婆さんは言います。桃太郎は力強く頷くと、愛用の刀を握り締め、

家を後にしました。

「・・・行ったか・・・。」

 お婆さんは寂しそうに呟きます。しかし、次の瞬間には

恐ろしい笑みを浮かべていました。

「・・・ひっひっひ。これで桃太郎が見事鬼を退治すれば、

ワシは英雄の母親として祭り上げられる事になる。

それまでは長生きせねばな・・・。」

 野心の炎はお婆さんの目にも灯っていたのです。

 ②

 お婆さんとお爺さんの家を後にした桃太郎は、そのまま村の出口へと向かい、

言われたとおり、栗村へと向かいました。

 腰の袋には、お婆さんから貰ったきび団子(改)が沢山入っています。

この団子。普段は乾いてカチカチですが、

お湯を掛けると3分で出来立てホヤホヤの熱々団子に変化するという、

とても優れた特徴を持っていました。

 後の世のカップヌードルの原型になったのは言うまでもありません。

(シンパチ書房巻 第12章「やっぱカップはラーメンよりヌードルだよね」参照。)

 村を出て半日、桃太郎はのどかな田園風景を眺めながら、順調に北上を続けていました。

太陽がそろそろ山間に沈もうとしていました。

この地域には、まだ鬼の手も伸びてはいないようです。

退屈な桃太郎は腰の愛刀を意味も無く抜き放つと、

真っ赤に染まる夕暮れ空に向けて、まっすぐに掲げました。

「今はまだこの刀を天に向けて掲げることしか出来ないが、

俺様はいつか、いつか必ず、天からこの刀を大地に向かって

振り下ろしてみせるっ!」

 夕暮れを見てセンチになったのか桃太郎は、誰もいないと思って、

思わず恥ずかしい言葉を吐いてしまいました。

しかし、よく考ると「何故今?」的な空気がバリバリです。

 すべては桃太郎の自己満足の世界の事のはずでした。

しかし、迂闊にも桃太郎は気が付いていませんでした。

桃太郎と同い年ぐらいの少年が後ろに居て、しっかりと聞いていた事に。

「ぷ・・・。」

 少年は思わず噴出してしまいました。

「え・・・。」

 桃太郎はようやく少年の存在に気が付き、

恥ずかしさの余り、耳まで真っ赤になってしまいました。

「きっきっきっきっ貴様~~~~~!!」

 さる桃太郎は照れ隠しに大声で怒鳴りました。

「何時の間に俺様の背後にいやがった!?」

「はぁ?ずっと前から居たよ。気が付かなかったの?」

 桃太郎は驚きました。ハエの気配すら感じることの出来る桃太郎に、

まったく気が付かせないとは、この少年、只者ではありません。

 「貴様、何者だ。」

 桃太郎は刀を正眼に構えると、用心深く相手を観察しました。

よく見ると、身体は細身ながらも筋肉で引き締まっており、

優れた敏捷性を持っているであろう事が容易に連想できます。

「別に名乗るほどの者でも無いさ。」

 桃太郎は、男前な台詞を恥ずかしげも無く言い放つ、

この少年を無条件で嫌いになりました。

「君、栗村に向かっているのかい?だったら、また会えるかもね。」

 言うが早いか、少年はあっという間に走り去ってしまいました。

驚異的な速さです。

・・・と、思ったら少年は突如引き返し、桃太郎の前まで戻ってきました。

「振り下ろしてみせるっ!!」

 少年は、さっきの桃太郎の台詞を真似すると、

いやらしい笑みを浮かべながら、再び走り去っていきました。

「なっ!!!」

 桃太郎は怒りで耳まで真っ赤になってしまいました。(2回目)

「待てぇ!貴様ぁ!絶対に許さ~~~~ん!!!」

 桃太郎は刀を振り回しながら、少年の後を追いました。

二人とも凄まじい早さです。

途中、奔る二人の起こした突風により、多くの被害が出ました。

①藁葺き屋根が飛んだ。

②瓦屋根が飛んだ。

③お地蔵さんも飛んだ。

④誰かのヅラが飛んだ。

⑤飛んだヅラが若禿げの村人「小松」の頭に被さった。

⑥小松が自分に自信を持った。

⑦小松が未来に希望を持った。

⑧小松が、片思いの女の子に告白した。

⑨フられた。

⑩ヅラの馬鹿やろ~~!!

(若禿げ小松のお話はその後外伝で。《嘘》)

 既に二人は数時間走り続けています。

驚異的な体力です。桃太郎もだんだん走っている自分が

格好良いと思えてきました。が・・・それは妄想でした。

少年の速さは桃太郎よりも僅かに勝っていました。

とうとう二人の間に距離が出始めました。

「畜生!!」

 桃太郎、屈辱です。その後、ついに少年の姿を見失った時、辺りを見回すと、

そこには立派な栗の木が並ぶ、風光明媚な村が広がっていました。

「栗村・・・。」

 辺りは既に日が暮れて、夜の闇が村を包んでいました。

所々、松明の火が闇の侵食に対抗して、苦しそうに揺らめきながら、

己を主張しています。

 

 こうして、桃太郎は馬鹿にされながらも、

栗村に辿り着いたのでした。

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桃伝説 第1章

1章「来襲せし者達」

 「桃から産まれたから桃男にしようかと思ったけど、それじゃあんまりだから、

桃の種男。いや、なんか種馬みたいで格好悪いから没。じゃあ、桃の助。

・・・なんかピンとこないねぇ・・・。あ~・・・なんか面倒になってきた。

もう良いわっ!なんだかんだ考えるの辞めた!こいつの名前は普通に太郎!」

 略して桃太郎は、お婆さんとお爺さんの元ですくすくと育ちました。

戦闘の達人であるお婆さんからは、戦いの基本から応用までを、

マゾの神であるお爺さんからは、防御の基本から応用までを

(あえて攻撃を受けて快感に浸る方法はお婆さんの強い反対にあい、

教えることが出来ませんでした。)、

それぞれに教えてもらいながら、桃太郎は実に「強く」「逞しく」

そして「野心家」に育ちました。

 産まれ出でて8年を数えた時から、桃太郎は心に一つの想いを抱くようになっていました。

「天下統一」

 なんと、10歳にも満たない、この子供の目には、

既に歴代の諸大名となんら変わりのない、野望の火が灯っていたのです。

(だが、まだ早い。今は心身ともに未熟。あと5年・・・。あと5年のうちに、

あらゆる困難に対抗しうるだけの、強い身体と心を養わなければ・・・。)

 桃太郎、生後8年と4ヶ月。今日も彼は明るい未来に向けて、

己を磨き続けているのでした。

 その頃、桃太郎の住む、この大地に、二つの異変が起こっていました。

 まず一つは、今まで名も無かった小さな集落が、名前を持ち始めたことです。

近隣の集落の長が集まって寄り合いを開いたところ、

①集落に名前が無いのは不便だ。

②これからはそれぞれの集落も個性を持つべきだ。

③集落対抗運動会がやりたい。

④お婆さんに斬られた吾兵は何処の集落のものだ?

⑤筆者が、集落に名前がないと書きづらい。

⑥集落に名前が無くても、読者に分かりやすく書けるほど、筆者には文章力が無い。

 など、様々な意見が飛び出し、それぞれに名前を持つことが

決められました。

 桃太郎の住む集落は、雄大なる馬追丘陵(この物語の中の丘陵。

ちなみに「うまおい」と読みます。)の麓、

ゆったりと縦に伸びたその姿から「長村」と名付けられました。

 長村から北へ徒歩で1日の距離にある、吾兵の住んでいた集落は、

秋に立派な栗の木が、多数実を結ぶため「栗村」と名付けられました。

 その他にも、幾多の集落が、それぞれの特徴を込めた名前を、

自らの住む集落にあてがうようになりました。

 こうして、多くの集落が集まり、「蝦夷国(えぞぐに)」が形成されたのです。

 二つ目の異変。

 蝦夷国が形成されてから、2ヶ月も経たないうちに、

国の至る所に「鬼」が目撃されるようになったのです。 

 鬼は田畑を荒らしたり、家畜を襲ったり、徒党を組んで村を襲撃したりと、

悪行の限りを尽くしていました。

 それぞれの村の村長は、再び寄り合いを開き、

鬼に対抗するべく、討伐隊を結成して鬼退治に向かいました。

しかし、鬼達は、この世のものとは思えない強さで(そりゃあ、鬼だからね・・・)、

幾度となく派遣された討伐隊は皆、ことごとく全滅させられてしまいました。

 そして、その後鬼達は、蝦夷国最大の集落である「札村」を陥落。根城を構えると、

近隣の村に対して侵略を始めたのです。

 

 鬼達の中には、特に凶暴な三匹の鬼が居ました。

ここはキャッチフレーズ付きでご紹介いたします。

 一匹目は、「あんたが大将、俺ら(鬼ら)の大将、

その一撃は空気を引き裂く。天下無双のろっ鬼ーです。」

 その通り鬼達を束ねる総大将です。

語尾に必ず「~ワン♪」を付けて喋るという可愛らしい一面を持ちつつも、

戦闘能力は群を抜いており、百人の討伐隊をたったの10分で

倒してしまったという話です。ぱっと見「ただの犬」にしか見えないらしいのですが、

頭には立派な二本の角があり、何か気の様な物をまとっていると

言うことでした。(証言者:札村の生き残り「作衛門」)

 二匹目は、「猪突猛進。ちょっと頭は弱いけど誰にもオイラは止められねぇ。

足跡いつでも一直線。特攻隊長正拳突鬼です。」

 常に先陣を切って敵に突っ込む、かなり血の気の多い鬼です。

その突進力は半端ではなく、丸太で作った柵を軽々と破壊し、

待ち構えた討伐隊も、誰一人彼を止める事が出来ませんでした。

ただ、その後勢い余って岩山に衝突して、気を失ったというアホな一面もあり、

なかなかどうして憎めません。(証言者:討伐隊「熊次」)

 三匹目は、「冷静沈着。それが私のモットーだ。如何なる時でも慌てるな。

お前の横には誰が居る?生ける戦術指南書計算鬼です。」

 鬼達の軍師を勤める、頭脳明晰な鬼です。

バラバラな鬼達をまとめ上げ、軍隊として完成させたのが彼です。

ただ、残念ながらキャラ的には大して面白みも無く、冗談も通じないので、

鬼達の中ではどこか浮いている感バリバリです。(証言者:正拳突鬼)

 このように、強力な鬼達は、今日も元気に明るく悪行に励んでいます。

果たして、人間達の運命は如何に?

 

 こうした二つの異変が起こりつつも、桃太郎の住む長村は田舎なので、

時勢に流されず、ほのぼのと毎日を送っていました。

 そして、月日は流れ、桃太郎が13歳の誕生日を迎えた朝。

いよいよ、物語は動き始めるのでした。

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桃伝説 序章

序章「其の者の名は」 

 昔々、ある所にお爺さんとお婆さんが居ました。

そりゃあ、何処にだってお爺さんとお婆さんぐらい居ます。

これからの日本は高年齢化が進んで、

至る所、全国津々浦々にご老人はいらっしゃるのです。

まぁ、しかし、それを言ったら話が進みません。

続けるとしましょう・・・。

 

 お爺さんは山へ「しばかりしばかれ」に行きました。

なんと、このお爺さん。怖いことにマゾなのです。

いい年をして。確かに他のお爺さんより体つきはガッチリしていて、

肌年齢もかなり低そうなのですが、

流石に最近、鞭の衝撃に体が悲鳴を上げ始め、限界を訴えているのでした。

(もうそろそろワシも引退かのう・・・。)

 

 お爺さん、憂鬱です。

 

(なんの!死ぬまで現役!ワシはまだまだ諦めんぞ!!ウフ)

 お爺さんは悩ましく自分にカツをいれて、

今日も快楽の世界へと旅立っていくのでした。

 

 一方その頃。お婆さんは川へ「洗濯決闘」に行きました。

なんとこのお婆さん。怖いことにバトルマニアなのです。

いい年をして。確かに他のお婆さんより体つきはガッチリしていて、

眼光もかなり鋭いのですが、

流石に最近、刀を持つ手に力が入らなくなり、体が限界を訴えているのでした。

(あたしもそろそろ引退かねぇ・・・。)

 

 お婆さん、憂鬱です。

 

(なんの!死ぬまで現役!あたしはまだまだ戦うよっ!)

 お婆さんは勇ましく自分にカツをいれて、

今日も戦場へと旅立っていくのでした。

 マゾのお爺さんは、山の中に佇む如何わしい館の前に着きました。

この時代には似つかわしくない、洋風の館です。

壁一面が紫色に塗りたくられた、とっても趣味の悪い館です。

これから繰り広げられる様々な行為を期待して、

お爺さんは胸を高鳴らせながら、扉の中に入っていきました。

ーーー以下、リアルな表現(18禁)が必要になりそうなので略ーーー

 

 一方その頃、お婆さんは川岸の草むらに身を潜めていました。

両手にはしっかりと刀が握られています。

敵が油断しているところに奇襲を掛ける気です。

敵は隣村の村人、「吾兵」です。

数週間前にお婆さんが隣村に行ったとき、

吾兵の家になっていた柿を盗み食いしたのがきっかけで

争いとなり、本日この場での決闘をもって決着を付けるという

事になっていたのです。

 この様に、お婆さんはいつも、至る所で争いの種を作っては

決闘をしているという困った人でした。

 

 夫婦揃って、昔話の登場人物とはとても思えないほど濃ゆいキャラです。

 

 いま、吾兵がまさにお婆さんの目の前を通っていきます。

(けっけっけ・・・。気づいていないね・・・。)

 お婆さんは完璧に気配を消しています。

そして、飛び掛ろうとしたその瞬間、お婆さんは信じ難いものを

横目に捕らえました。なんと直径1メートルはあろうかという

巨大な桃が川の上流から、どんぶらこっこ~と流れてきたのです。

「げっ!!なんじゃ!?このでかい柿は!!気持ち悪いっ!!!」

 お婆さんは驚いて、思わず大きな声を出してしまいました。

「ぬっ!!曲者っ!!」

 その声に、吾兵はお婆さんの存在に気がつき、

居合いも真っ青の速さで刀を抜き放ち、切り掛かって来ました。

「ちぃっ!!」

 お婆さんは言うが早いか、身を翻し、巨大桃の後ろへ飛び退りました。

 

バシュッ!!

 

 吾兵の刀は易々と桃を両断し、次の瞬間には鞘の中に納まっていました。

凄まじいまでの達人振りです。そして、再び攻撃を仕掛けようとした次の瞬間、

吾兵は驚くべき光景を目にしました。

 なんと、ぱっかりと割れた桃の中から、桃の果汁でベトベトになった

一人の赤子が出てきたのです。

「おぎゃ~~~~~~!!(痛ぇ~~~!!足斬られた!!)」

「ほぎゃ~~~~~~!!(いきなり何さらすんじゃ、この爺ぃ!!)」

 呆気に取られる爺と婆。けたたましい赤子の鳴き声が川に

鳴り響きます。

「はっ・・・。」

「お・・・。」

 正気に戻るまでの僅かな差が生死を分けました。

お婆さんは吾兵よりも早く刀を抜き放ち、一刀の元に切り伏せてしまいました。

「・・・危ないところだった。吾兵、今までの敵の中ではお前が一番速かったよ。」

 お婆さんはもう動かない吾兵に敬意を表して、そう呟きました。

「おぎゃ~~~~~!!(痛ぇ~よ~~!!)」

「フぎゃ~~~~~!!(助けろこの婆っ!!)」

 赤子は依然として泣き続けています。

「さて、どうしたもんかねぇ・・・。」

 お婆さんは取り合えず赤子の傷の手当てをすると、

その胸に抱き抱えました。よく見ると(どこを?)男の子です。

「そうだっ!家の子にして、最強の侍に育て上げよう!!そうよっ!それが良いわっ!!」

 子供の居なかったお婆さんはそう心に決めると、あっという間に赤子を連れ帰ってしまいました。

誰の子なんだろう・・・とか、お婆さんは一切考えません。

極めて自分の欲望に正直な人だったのです。

 お婆さんが家に帰ると、お爺さんは既に帰宅していて、

恍惚の表情をして横たわっていました。

 

 一体、山で何があったんでしょうね?

 

「ほらっ!!邪魔だよっ!!どきなっ!!」

 お婆さんはお爺さんを足蹴にすると、赤子にこびりついた桃の果汁を

綺麗に洗い落として上げました。

「・・・どうしたんだい、その赤子は?」

 お婆さんに蹴飛ばされて正気に戻ったお爺さんは、

疑っているような表情でそう訪ねました。

「川で拾ったんだよ。」

「嘘つくんじゃね~~よっ!!一体何処で仕込んできやがった!?」

 お爺さんは疑心暗鬼です。

「うるさいねっ!!本当に川で拾ったんだよ!!しばくよっ!!」

「ドキッ!!」

 お爺さんは、お婆さんの「しばくよ」という言葉にトキメキLOVEになってしまいました。

再び夢の世界へと旅立っていきます。

 そんなお爺さんを完璧に無視して、お婆さんは紙と筆を用意しました。

「さて、これから赤子の名前を考えないとねぇ。」

 ささやかな命名式です。

 しばらくして、お爺さんが夢の世界から戻って、正気に返ると、

目の前には赤子を抱きながら眠るお婆さんがいました。

そして、横には赤子の名前の書いた紙が置いてありました。

お爺さんはその名前を読み上げました。

 

「桃から産まれたから桃男にしようかと思ったけど、それじゃあんまりだから、

桃の種男。いや、なんか種馬みたいで格好悪いから没。じゃあ、桃の助。

・・・なんかピンとこないねぇ・・・。あ~・・・なんか面倒になってきた。

もう良いわっ!なんだかんだ考えるの辞めた!こいつの名前は普通に太郎!」 ←全部名前

 

「・・・長っ・・・。」

 お爺さんは一息に読み上げようとしましたが無理でした。

結局その後、最初と最後だけをくっつけて、「桃太郎」と呼ばれるようになるのですが、

そんな些細な事はお婆さんにとってはどうでも良い事でした。

 

 

 

 

 

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